自分のH度…
気にならない?

短編

ねずみ小僧 〜猿と猿回し〜
postman様:作



[紹介文]ねずみ小僧次郎吉たぁ、俺のことだぁ!



(一)生い立ち



「コラー、このガキー!待てーぇ。」

この声を聞くたびに、次郎吉は幼い頃の自分を思い出すのが常だった。

近頃そんな思いをすることが多々あると、次郎吉は感じていた。

「不景気な話ばかりの、世間さまだ。」と、誰にとはなく呟いてみた。



当時、歌舞伎役者の社会的地位は低かった。

ほんの一握りの役者は、今で言うパトロンを持つことにより金回りは多少良かっ たものの、殆どの役者は汲々としていた。

ましてその歌舞伎役者の下で働く出方を父に持った次郎吉は、貧乏人という世間 さまの偏見から抜け出られなかった。



確かに、盗みを働いたこともあった。

育ち盛りの空腹を満たすには、八百屋からこっそりと大根などをかすめ盗らなけ ればならなかった。

又、自分よりも幼い子ども達に分け与えてもいた。

そんな幼児達の尊敬のまなざしが、次郎吉には誇らしく思えた。



しかしそんな次郎吉でも、身に覚えのない盗みを咎められることは我慢ができな かった。

次郎吉の盗癖が知れ渡っている状態ではやむを得ない、自業自得ではあるのだが 。

「大人になったら大金持ちになって、あの八百屋の親爺に、小判を何枚も叩きつ けてやる!」

棒きれで殴られながら、次郎吉はいつも反すうしていた。



『大人になったら・・』

それが子供の次郎吉にとっては、万能\薬の如くに思えていた。

大金持ちになることも容易い(たやすい)ことだと思えていた。

唯、その為に何を為すべきかは解らないでいた。



毎日が空きっ腹の次郎吉は

『大人になったら・・』と、呪文の如くに呟くだけだ。

しかしながら、そんな夢のような呪文も、年を経るにつれ段々と萎んで(しぼんで) いった。

二十代半ばとなった今では、何の夢もなくー子どもの頃の夢を忘れているー日々 を暮らしていた。



  七、八歳の子どもが駆けて来る。

手に、その手の平よりも大きいリンゴを、さも大事そうにかかえて。

泥だらけの顔に、妙に目だけをギョロつかせている。

幼い頃の次郎吉そのものだった。

次郎吉の心に、ムクムクと湧き上がる物があった。




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