12・シール
「また、改めてお礼に来ます」
そう言った日からもう2日が過ぎようとしていた。
あの日も昨日もそして今日も仕分け作業中に
ごくごく薄い緑色の封筒を見ることはなかった。
僕は手紙のお礼を言うタイミングを逃してしまっていた。
夕方に近い時刻に、局の電話が鳴り
「小包を取りに来てほしい」という注文があった。
僕は赤い軽バンを運転している。
日はだんだんと長くなり、まだ車内へ照りつける日は暑い。
田んぼを抜け小さな川沿いを下ると電話をかけてきた家があった。
愛想のいいおばあさんがいて
「ごくろうさま」と
冷たい麦茶をご馳走してくれた。
伝票処理をして麦茶のお礼を言い荷物を受け取る。
赤い軽バンに荷物を載せていると、車の横を学校帰りの
2人の少女が楽しそうに帰っていく。
「ねえねえ、シール見せて〜」
「ふわふわシールほしい」
「じゃあ、その犬のシールと交換する?」
2人の少女は名札の裏に貼ってあるシールを交換していた。
少女が通り過ぎてから、僕は運転席に座りエンジンをかけた。
仕事の帰りにマーケットに寄った。
適当にお惣菜を選びレジに並ぶ。
18時以降は惣菜やお刺身パックなどの
商品が半額になることもあってか、
仕事帰りの奥様やサラリーマンの姿が目に付く。
並んでいる最中に僕はふっと少女たちのことを思い出していた。
少女達は楽しそうにシール交換をしていた。
そうだっ
手紙のお礼にシールをプレゼントしよう。
僕は「すいません」と並んでいた列からはずれ、
文房具用品がある陳列棚でシールを探した。
キラキラした花のシールやうさぎやいぬやねこなどの動物シールなど、
結構いろんな種類のシールがあるんだな〜と僕は驚いていた。
四つ葉のクローバーのふわっとしたシールがあと1つしかなかった。
人気があるのかな?
僕はその四つ葉のクローバーのシールが
10個ぐらいついているシールシートををかごに入れ
またレジに並んだ。
ソファーの前の机に買ってきた惣菜を並べ、
冷蔵庫から350mlのビール缶を取り出してテレビをつける。
野球中継は中盤を迎えようとしていた。
ビニール袋からシールシートを取り出し、
僕はソファーの上に放り投げていた鞄をあけシートをしまう。
夜風が入り、部屋のレースカーテンが膨らみながら揺れた。
【0015】
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