9・雨の日
雨
どんよりとした灰色の雲に覆われ、時折雨足は激しさを増す。
用水路の水は雨のせいで流れが速く、
落差があるところでは白い水しぶきがゴーという音と立てている。
田んぼに雨粒が落ち水輪があちこちで重なっていた。
雨の日の配達はかなり憂鬱だ。
視界も悪いうえに手紙が濡れてしまわないように
細心の注意が必要となってくる。
僕は配達順に手紙をバイク後方のケースに入れて
配達地区を廻っている。
あの手紙はケースの1番下に入れてあった。
1番最後に届けることにしたのだ。
1軒1軒手紙を配りながら、
僕は心拍数が上がるのを感じていた。
僕に手紙をくれた少女
「手紙をありがとうございました」
いや
「手紙をありがとう」
どういう言葉がわかりやすいんだろう、
まだ言葉を見つけられずにいた。
両側が田んぼのまっすぐな道を右にそれ、
生姜畑を抜けるとその手紙の住所に行き着いた。
白く塗られた塀に囲まれた家
門扉はなく
玄関まで四角の石が5,6枚、敷き詰められている。
家の入り口付近にはたくさんの花鉢がセンス好く並べられ
パンジーやビオラの花が雨粒にうたれ、
花弁から雫がポツンポツンと流れて落ちていた。
僕はバイクを家の前にとめ、
ケースから手紙を取り出し玄関の呼鈴を押した。
ピンポーン
雨はますます激しく降り、
雨音が呼鈴の音を消しているようにさえ感じる。
ピンポーン
「はーい」
と、言う声が雨音の中微かに聞こえた。
僕は引き戸に手をかけ、
遠慮がちに半分ぐらい開けた。
仄暗い廊下の奥、
白のワンピースに桜色のカーディガンを羽織った女性が立っていた。
ショートボブに整えられた黒髪に透きとおった肌が際立つ。
僕とそんなに歳が離れてるように見えない。
「あっ、えっと郵便です」
「そこの靴棚の上に置いてもらえますか?」
雨音にかき消されてしまいそうな小さな声でそう言った。
僕は靴棚の上の杜若の花が活けられている花器の前に
そっと手紙を置き、その女性に一礼して踵を返し戸を閉めた。
あー忘れてた・・・手紙のお礼を。
僕に手紙をくれた子のお母さんかな?
【0011】
次へ
戻る
あなたも小説を投稿しませんか?短い内容でもOKだよ!→
投稿ホーム←
☆DISマガジン登録☆
モノクロレターTOPへ戻る
ト襯iscovery覽OPへ戻る
(c)携帯小説襯iscovery