5・3度目
「おはよう」
矢野と僕は挨拶を交わし、今日が始まった。
午前中に配達が終わり、局へ戻る。
風は無風で汗が身体にまとわりつく。
局内のロッカールームにて、タオルで汗を拭い、
ペットボトルのお茶でのどを潤した。
今年初めての夏日
むぅっとした空気が足下から昇っていく。
「矢野とはどう?」
耕一が僕より遅れて仕分け作業に取り掛かった。
「ちゃんと送りとどけました」
「へぇ〜、ってそれだけかい」
「何かあってほしい言い方だな・・・今度2人っきりで会おうってさ」
「おおっ!いいねいいね」
「そう」
「お前に気があるんじゃねぇの」
「・・・」
「相変わらず鈍いね、おまえさん」
「俺とは正反対と言いたいんだろ。そういう耕一はどうよ」
「同じく・・・送りとどけただけだよ」
「送りとどけただけって不服そうだね」
「いんや・・・まあまあ・・・この際さぁ矢野と付き合っちゃえば」
「どのさいだよ」
「やさい」
「あのな〜」
「好きになってからじゃなきゃ付き合えんっていうルールはないしな」
「・・・考えとく」
「恋が逃げてくー」
耕一は右腕を前に伸ばし、待ってくれ〜というポーズをする。
局内は冷房が効き、
まとわりつく空気から開放され、額の汗はひいていく。
大型封筒を手に取りまとめていると、
茶封筒の下に薄い緑色の封筒が瞳に映る。
土の中から新芽が出てくるように、その封筒が際立って見えた。
僕は封筒を手に取った。
前の2通と全く変わりなく薄い緑色の封筒は存在していた。
「3度あったな」
封筒を見つめている僕に耕一が作業の手を止め言う。
「2度あることは3度あるって言うやろ。
よっぽどおまえのことを気に入ってるんだな」
「まさか〜。小さい子から見れば僕らはおっさんだよ」
「そうそう。いや僕らじゃなくて君がそう。俺は違う」
小学校の低学年のとき、
20歳過ぎた大人はなんかおっさんだと見えた。
今の僕はその年齢になっている。
そういえば・・・
前の2通の封筒は開封もせずにずっと
鞄に突っ込んだままだったことを僕は思い出した。
【0005】
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