スタートをなる瞬間

緊張は最高潮を上回る

スタートをした瞬間

緊張は消える

今までの努力も

この後の達成感もこの時だけは考えなくなる

皆の応援する声が

自分の足音が

高鳴る鼓動とともに

目に見えない光として輝く

ゴールを駆け抜けると

倒れかける自分と

呼びかけても動かない足は

御疲れ様の声とともに

今も今からの自分にも

忘れることのない思い出として

存在し続けるだろう



高専に入ると同時に、和実は寮に入った。そして、寮生に誘われ、バドミントン 部に入った。続くはずがないことはわかっていた。そしてやっぱり続かなかった 。

人間関係も、厳しい練習も嫌だった。腕立ては一回も出来ないままだった。その ため、サボる理由に、コンピューター研究部、郵便友の会、バレー部マネをかけ もった。

 ある日、学校の体育で体力測定が行われた。

もともと女子が少なく、運動が出来ると言うほどの学校ではなかったので、全て において上位になった。幅跳びが4m50で陸上部に誘われるほどだった。嬉し かったのに、きつい事が続く自信がなかったので、バドミントンを理由に断った 。

 だが、何故だか断った事を後悔していた。だから和実は数週間後に、結局、陸 上部に見学に行った。

 その頃は、和実は陸上を知らなかった。タータンがある事とか、スパイクピン がかえられる事とか、100m、1000m、10000m、マラソンしかない と思っていた。

 だから、和実は好奇心に煽られたまま、見学ついでに短距離と練習を始めた。

バドミントンに行く回数も減り、次第に陸上部で練習するようになった。

一年の夏の終わり頃のことだった。不健康なガリだった和実の体にはきつかった 。膝、足首はずっと関節炎。疲労骨折。でも和実は何故か苦にならなかった。新 しい環境にワクワクしていた。

 何日もすると部員と同じ練習をするようになった。バドミントンには行かなく なり、辞めることにした。時期的には新人戦という試合がある時期で、和実が出 場すると決めた種目は100mと幅跳びだった。和実は試合に出る一ヶ月前から 緊張していた。夜中に起きるようになった。授業中陸上のことばかり考えていた 。

だから、試合の前日に相談をしようと、寮の友達と一緒に屋上で話した。

「走れなかったらどうしよう。私は駄目な人間だから駄目かもしれない。」

不安ばかりだった。

「頑張って。」

友達はそう言った。

だから、和実はやれるだけやってみようと思った。

朝五時、寮生の挨拶の声は聞こえない。和実は支度して、友達と競技場に向かっ た。

競技場につき、タータンを見ると余計に緊張が高まった。その中で和実はアップ をした。先輩には、まだ部活を始めたばかりだから、アップは短めにと言う指示 を受けていたので、和実は疲れすぎないように体をあたためた。

着替えて召集所に行った。腰ゼッケンを貰った。何処につけるかすらわからない 和実は、最終コールで聞くまで汗ばんだ手で握り締めていた。

雷管の音が次々と鳴る。自分の順番がきた和実は、スタブロについた。そして雷 管の音と同時に和実はスタートした。前傾なんて出来なかった。隣の人が飛びぬ けて速かった。だから、和実はドベになるまいと必死にもがいた。そして、ゴー ルした。和実の初めての100mは14秒75で、組で下から二番目のタイムだ った。

その後に記録会が二回あったが、100mでは躓いて失格と、14秒5程度だっ た。幅跳びは4m33だった。こんな終わり方で、和実の高専一年の陸上生活は 幕を閉じた。



【0004】

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