「もちろん、俺は優等生だからな。お前といなければ補導員にも目を付けられね ぇよ」

「うわー、なかなか言うね、鳴瀬くん。清廉潔白な振りして真っ黒なくせに」

「真っ黒って…人を悪人みたいに言うなよ…」



げんなりした表情で言い返すと、とても楽しげにクスクスと笑われた。

…そう…、楽しげに笑っているのは瀬川1人。

補導員の話に気を取られて、しっかりと、あと1人の存在を、この一瞬だけ忘れ てしまっていた…。



「…痛…!」



突然襲った手首を締め付けられる痛みに、呻き声が零れる。

見ると、凄いチカラで思いっきり手首を掴まれていた。

もちろん犯人は圭介だ。



「痛いだろ…って、おい、ちょっと待て」



抗議するつもりが、もの凄い馬鹿力で上に引っ張り上げられ、不本意ながらベン チから立ち上がる事になってしまった。

そしてそれだけには留まらず、瀬川がいる方とは反対方向に向かって歩き出す圭 介に、さすがの俺も慌てる。

引きずられるように歩きながら瀬川を見ると、呆れたように両肩を竦め、苦笑い を浮かべながらヒラヒラと右手を振っている姿があった。



「………」



こうなった圭介は誰にも止められない。

諦めて溜息を吐き、次第に遠ざかる瀬川に向かって軽く片手を上げて挨拶すると 、しっかりと前に向きなおって歩きはじめた。



無言の状態の圭介に手首を掴まれたまま、池周りから離れ、広場を抜け、噴水の 横を通り越し、そして最終的に公園を出る事になった。



「………」

「…おい…、どこに行くつもりだよ」



公園を出てもまだ無言の相手に問いかけると、横目でジロリと睨まれる。

…いったい俺が何をしたっていうんだ…。

瀬川が現れたあたりからどうも様子のおかしい圭介に、ハァ…と溜息が零れた。

とりあえず、コイツの気のすむまで付き合ってやるしかない。

また前を向いて歩く相手に引っ張られたまま、大人しく後をついていくことにし た。

【0050】

次へ

戻る



あなたも小説を投稿しませんか?短い内容でもOKだよ!→

投稿ホーム

☆DISマガジン登録☆
心に刺さる棘は甘い蜜の味 TOPへ戻る

襯iscovery覽OPへ戻る

(c)携帯小説襯iscovery