駅前のカラオケ『アルギザ』
ゲームセンターやボーリング場などの入っているアミューズメントビルの、地下
一階にあるカラオケボックス。
学生は学生価格というものが適用されて格段に安くなることから、放課後は高校
生で溢れかえっている人気店だ。
そのビルの入口で立ち止まって一息つくと、微妙に様子が変だった圭介の様子を
思い出して眉を寄せた。
結局アイツが何を言いたかったのか、よくわからなかった。
「…いつもそうだけど、アイツだけはホントわかんねぇ…」
ブツブツと口の中で呟くように文句を言いながら、地下へ通じるエレベーターへ
向かって歩き出した。
辿り着いたカラオケ店の狭い受付ロビーに立って携帯を取り出す。
たぶんもう早い奴が部屋を取っているはず。部屋番を聞かなければどうにもなら
ない事に気づいたのは、実は今だったりする。
圭介の事があったせいで、ちょっと考えが回らなかった。
…誰に電話すればいいんだ?やっぱり瀬川か?
アドレスからクラスメイトの携番を見て考えていると、突然首に誰かの腕が回さ
れてグイっと背後から抱きしめられた。
その時にフワッと広がった香水の匂い。この甘くスパイシーな香りで背後に立つ
相手が一発でわかった。瀬川だ。
「待ってたよ鳴瀬。もし来なかったら家まで迎えに行こうかと思ってた」
「…は?!そこまでかよ」
冗談とはわかっていながらも、振り向かないままツッコミを入れるように言葉を
返すと、喉奥で「ククッ」と笑う瀬川の声が耳に入る。
…ホント、性質(タチ)悪いな…。
明らかにからかっている事がわかる態度に溜息が零れるも、背後に張り付くその
相手を気にもせずに足を踏み出した。
【0036】
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