「…水人…、こっち向いてよ」
横を向いている俺の耳元で囁くように言う圭介の声に、背筋が震える。
「…イヤだね」
そう言った自分の声が僅かに掠れたような気がして、唇を噛みしめた。動揺を悟
られたくない。
それでも悔しい事に、そんな心の内なんてバレバレだったらしく、更に顔を近づ
けてきた相手の唇がワザとかのように耳たぶに当たった。
「こっち向いてくれなきゃ、キス…できないだろ…」
低く甘い声で囁くように言われたその言葉と耳に触れる圭介の唇に、堪え切れず
肩が揺れてしまう。
「こ…んな所で、何考えてるんだよお前は」
片手で相手の胸元をグイっと押して無理やり隙間を作ると、ようやく前を向きな
がらそう言い捨てた。
それでも瞳の交わる距離はかなり近い。声を発すればお互いの吐息が唇に触れる
ぐらいに…。
「それって…ここじゃなければキスしてもいいって事?」
わかってて揶揄っている意地の悪い声に、今度は俺がその脛を蹴飛ばしてやった
。
「…っ…!…ちょっと水人、酷くない?!酷いよな?!」
【0033】
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