Side:相羽圭介
音楽室から出ていく水人の後ろ姿を見送り、その姿が消えた瞬間深い溜息と共に
床にしゃがみ込んだ。
「…なんであの人が怒ってんのか意味わからないし…。好きだからスキンシップ
はかって何が悪いんだよ。…入学式の時に一目惚れさせた責任取りやがれ…」
床に向かってブツブツ呟く。
二ヶ月前のあの日。
入学式だと言うのに朝っぱらから父親と怒鳴りあいの喧嘩をして、そのせいで遅
刻してしまう事態に陥った。
案の定、学校に着いた時には既に正門は閉じられていて、不審者が入らないよう
にその日限りだと思われる雇われ警備員が立っている。
昔からウマの合わない父親が警察官という事もあって、それ系の人間とは出来る
限り関わりたくない。
『…どうするかな…』
数分だけ警備員を眺めた後、正門から入るのを諦めて、学校の敷地を囲んでいる
フェンス沿いに歩き出した。
裏門から入れればそれでいいや…、という軽い気持ちで歩き出したはずだが…、
その裏門が見つからない。
『…マジかよ…』
これはマズイかもしれない。
もうこのままどこかに遊びに行ってしまおうか…、フェンスを背に歩道にしゃが
み込んで、そんな計画を練り始めていた時、
『…ん?…おい、お前その新しい制服…新入生じゃないのか?』
背後から僅かに掠れ気味のハスキーな声が聞こえた。
咄嗟に振り向くと、漆黒の髪に切れ長の目を持った生徒が、フェンスの向こう側
から無表情でこっちを見ている。
【0019】
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