「相羽…か…」
放課後。
音楽室に向かいながら数日前の事を思い出す。
七堀に連れられて行った紅茶専門店で、偶然にも初めて知ったオレンジ頭の苗字
に、「そうか…、名前ってものがあるんだよな…」なんて当たり前の事に気がつ
いたのは今日になってからだ。
ずっとオレンジ頭と呼んでいたせいで、それが名前のように感じていたけれど、
…そんなわけはない。
「あ〜…面倒くさいな…」
それにしても、これからしなければならない事を考えると頭が痛い。
帰ろうと思った矢先、昇降口へ向かう途中で音楽教師の本橋(もとはし)に会っ
てしまったのが運のつきだった。
『お、ちょうどいいところで会ったな、成瀬』
『…さようなら』
『ちょ、…さようならじゃないだろ、待て』
『…なんですか…』
『お前…、正直な奴だな…。そんな嫌そうな顔するなよ』
呆れた様に言う本橋に、思わず苦笑いをこぼす。
誰かに言われたが、俺は普段は無表情のくせに、嫌だという時になるとそれだけ
は表情に表れるらしい。
『音楽準備室に楽譜を置いてある棚があるだろ?あの中からベートーヴェンだけ
抜いて俺のとこ持ってきて。職員室にいるから』
『そんなの自分で持っていけばいいじゃないですか』
『教頭から呼び出し掛かっちゃったんだよ、あのハゲ、ホントにウルサイんだか
らもう…。って事で頼んだぞ!成瀬!』
『あ!ちょっと待てよ…、って言い逃げだろそれ…』
こっちの拒否の言葉を全く聞く気がないらしく、本橋は言うだけ言ってさっさと
走り去ってしまった。
無視しても良かったけれど、時折寝場所として音楽室を利用させてもらっている
だけに、今後の事を考えると無下には出来ず…。
【0016】
次へ
戻る
あなたも小説を投稿しませんか?短い内容でもOKだよ!→
投稿ホーム←
☆DISマガジン登録☆
心に刺さる棘は甘い蜜の味 TOPへ戻る
ト襯iscovery覽OPへ戻る
(c)携帯小説襯iscovery