初夏の物語 1



†  †  †  †



「…ッ…!」



屋上で仰向けになって気持ちよく寝ていたところ、突然わき腹に走った衝撃に小 さく呻いて目を開けた。



いったい何事かと視線を上げると、見知らぬ人物が横に立ってこっちを見下ろし ている姿が視界に入った。



ストレートでオレンジ色をした鮮やかな髪。気の強そうな吊り上がり気味の猫目 。



数度瞬きをしてから相手を確かめるように見ても、何度見ても、…絶対に知り合 いではないと言いきれる見知らぬ容貌。





そして数秒後。さっきの衝撃は、この見知らぬ相手に蹴られたのだと気がついた 。



両手を地面について上半身を起こし、先程よりは目の覚めた頭で相手を観察する と、どうやらこちらも同じ様に相手に観察されている事に気がつく。

意味がわからず、片手で前髪を無造作にかき上げてから口を開いた。





「…今、俺のこと蹴った…よな?」

「まぁね」

「まぁね…って…、見ず知らずの相手を蹴らないだろ普通」

「俺は普通じゃないんだよ」



その言葉には呆れた顔で大きく頷いてやった。あまりにも悪気の無い様子に毒気 も抜かれる。

見た感じは普通、というか、俺と同じような体躯をした生意気そうな男。

ムカついたわけではないけれど、このまま済ますのも納得がいかず、なんとなく やり返したくなって相手の脛に蹴りを入れた…ところから俺達の戦いは始まった …。



お互いに、致命傷を負わす気が無いとわかる軽いジャブの応酬のような取っ組み 合い。

相手の襟首を掴んでみたり腹に軽いパンチを入れてみたり…。



そして気がつけば、いつの間にか押し倒される形になっていた。

最初にココにいた状態で屋上に仰向けになる俺と、俺の大腿を跨ぐ形で座り込む 相手。

そして、相手の両手は俺の顔の両サイドに着いていて見下ろされている状態。

お互いに息が上がってしまい、暫くは口もきかずに荒い呼吸が辺りに響いていた 。



「…ハァ…ハァ…。…っ…お前、なんだよ突然…」

「ん?…こんな所で寝てるから」

「…寝てるからってなんで見ず知らずの奴に蹴られなきゃならねぇんだよ」

「素敵なコミュニケーションだろ」

「…どこがだ…」

何故こんな事になってしまったのか意味がわからない。 だいたいコイツはどこの誰だよ。

【0001】

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