2−6
男は、僕の脇腹に押し当てている丸めた
ビニール袋を掴んだ手を力強く引っ込めた。
僕はその時に腹部に猛烈な激痛が走った。
初めて何かの凶器で腹を刺されたのかと思いながらも
逃走する男の背を追った。
そして、
握る手には真っ赤に血染めたビニール袋が眼に入ったが
半開きのドアから半身を突き出したまま僕は倒れこんだ。
意識が混濁する中で駆けつけた隣人だろう驚き声が、
辛うじて聞き取れていた記憶はあった。
気が付いた時には、病院のベッドの中だった。
「看護婦さん、僕を誰が病院に連れて来たんだい」
と、訊いてみた。
「事情は判らないんですけど、
今日の朝、隣人が救急車を手配されたそうですよ」
看護婦は僕の点滴を整えながら、
ふくよかな笑みを零してそう言った。
【0046】
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