1−11
とっさに僕は「ある訳ないですよ」
とこたえてしまったが、今まで原稿を手許に残して置いた後ろめたさがあった。
老人の視線は宙をさ迷いながらも「無ければ無いでええ」と言う。
「返してくれとでも、親元から言ってきたんですか?」
僕は、そんな気もして訊いた。
「ええんや」老人はそういうものの、何か思案げな表情だった。
【0011】
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