父の死(3)
病院が所有する簡易の救急車が 家の前に着いた。
父という人間は自由人であると同時に
気性が荒く頑固一徹であった。
歴史の中でいえば非情であり常に 殺気立った人物
織田 信長 である
「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」
父の感情性を 私は こう捉えている。
何故なら父が弱音を吐く場面に遭遇したことなどなかったからだろう
強く 勝ち気で 常に殺気立った風貌の怖い父としか記憶にないのである。
父が肺炎になる以前から肝硬変も悪化していたらしく
徐々に弱っていく父を見て 母は何度となく入院を勧めたが
父は それを頑なに拒んでいた。
病院の中では自由に出来ない それが理由であったと思う。
この日 医師が往診で父に入院しましょう。
そう勧めると 意外にも父は小さく頷いた。
父が初めて負けた
そんな気がしてならなかった。
父はどんな気持ちで入院を承諾したのだろうか?
自身の死を恐れたのか?
家族の心情を察したのか?
真実は現在も父の心の中で眠っているのだろう
と当時を振り返っている。
病院の個室に運ばれた父を医師は再び診察していた。
テキパキと看護婦に指示する
その後ろ姿に言葉さえ出ない緊張感が伝わってくる。
どうやら 精密検査が必要らしい
医師は 小声で私に 言った。
「この患者さんが 今会いたがっている人を呼んで上げて下さい」
医師の言葉が 頭の中で木霊する
父が今 一番に会いたがってる人……
私は一瞬の迷いも無く妻に 電話をするように言った。
当然 それは母の職場である事は言うまでもない。
【0056】
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