記憶の糸 道楽(1)
私の父は62歳 という若さで この世を去った
私が26歳の時である
想えば父は好き放題の人生を生き抜いた
酒 博打 女 の3拍子である 酒を呑むのは毎晩で
土曜日の夜はバーやクラブにまだ 小学生の私を伴い
よく連れて行ってくれたものだ
私は父が飲みに連れて行ってくれる日が楽しみでならなかった
それは 必ず店で私の為にと注文してくれる
フルーツのせいだった 昭和42年頃だったが
フルーツの盛り合わせは高級なもので当時5000円
何故なら父が店の者に5000円で
果物を出してやってくれと言っていたからかもしれない。
ミラーボールが店内を回っている
赤や青の壁に映った模様を捕まえようと遊んでいたものだ……
ドレスを着たホステス達が
場違いな所にいる私を見ては驚いていた
「ボク?眠たくないの?」
よく云われ言葉だった 私は訊かれる度に首を横に振った
何故なら 眠いなどと タダをこねると 母が迎えに来る事になる
そうすれば このあとホテルに行けなくなってしまう
いうのも父は土曜日にはバーやクラブをハシゴして
気に入ったホステスを必ずホテルへ誘って外泊をした
うん と言わないホステスは店から話しをさせてでも
一晩を共にさせるから今 想えば始末が悪い
しかし これもまた父の生き様だったかもしれない
良いか悪いかは別として
必ず自分の思い通りに事を運ぶ性格である
父がホステスとホテルで一夜を共にしている最中
私はホテルに別に一部屋を取り遊んでいた
翌朝になれば必ず母が着替えを持って
ホテルまで迎えに来るのが当然だった
母は この時 どんな気持ちであっただろうか?
母が生きてる内に訊きたかった課題だった…………
【0052】
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