「見かけない顔だ。お嬢ちゃんたちは、ここいらの子じゃないね。君らは知らないんだ。この店で、アイツらの子供たちはやりたい放題、万引きをしていく。少しお灸をすえてやらんと、こっちは堪らんのだよ」

「アイツらって、いったい誰の事なの? 彼は仲間じゃないって言ってるじゃないですか」

「ふんっ。どういう意味か、そいつに聞いてみるといい」

 店から出た看板の横。こちらを振り返ろうともしない、その男の子の怒声が道路いっぱいに響く。

「いいさ。こんな店、頼まれたって来ねぇよ。俺がブルーに生まれたのは、俺のせいじゃねぇんだよ! この、クソじじい! 」

 荒々しく言い捨てて、男の子は早足で、車の途切れた車道を横切る。後ろ姿の、カバンを持つ手が震えていた。

(まさか、泣いているんじゃないよね)

当然のように追いかける秀。今度は二人がかりで、左右からガッチリと羽交い絞めにして止めた。

「ボクはあのお兄ちゃんと、もっとお話がしたいんだよぉ」

迷子の道案内の恩だけではなさそうだ。あの子がよっぽど気に入ったのだろう。

「今は止めとこう。きっとまた、会えるから」

「そう。夏休み中に、このテン姉ちゃんが、川へ何べんも連れて行ってあげるからさ」

 人みしりな秀が、いっぺんでなついたあの男の子って……。立ち去り際の、憂いに満ちた、ちょっと大人っぽい横顔が、撫子の頭にポワァッと残る。

「うんうん、撫子姉ちゃんも連れてってやるって」

 そんな風に、秀をなだめてみたが。この町へ遊びに来たからといって、再会の偶然に恵まれるとは限らない。でももし、またあの子に会えたら……。今度は、楽しいお喋りがしてみたいな。

【0016】

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