十二月三十一日。あと、七日。
沖の身に起こったような異変が、
香月に迫ってやしないか。不安。
反して、秘密を聞かせてもらえれば、
これまで表面だけしか見られなかった香月を理解し得るのかも。
心配と期待の、アンビバレンスな感情が交錯する。
落ち着かずに、わずかな開閉しか許されない、
ホテルの窓を見下ろす。
更けゆく聖夜の町並みは、
華やかなライティングできらめいていた。
着飾って寄り添い歩くカップルを、憧れて眺める。
香月の手紙を、胸に当ててみた。
(どんな用でも構わない。わずかな時間で充分だ。
辛かった今年の、最後の時を、香月くんと一緒に過ごせるのなら)
開いては閉じ、閉じては、また開く。
三十一日までの一週間、
ブルーのカードは封筒に仕舞われて、常に藍子の手元にあった。
大晦日の並木通りは、商店街が初売りで賑わうため、
深夜までバスが運行する。なので今夜は、
最終バスの時刻を気にする事もなく、ゆっくり出来る。
香月と別れた後も、母に怒られない程度の時間まで、
辺りの店をぶらつく積もりでいた。
香月に見てもらう為の、
シンプルなストレート・ラインのワンピース。
買ったばかりで履き慣れない、
ショート・ブーツ。どちらのカラーも大人っぽくを心がけて、
黒で統一する。おかげで、心も財布もすっかり軽い。
隣接するビジネス・ビルへ映る、夕暮れの彩りに見とれながら、
香月の指定した場所を探す。 並木通りならば、
行けば分かるだろうとの思惑どおり、Kビルは、
広い車道の角地にあった。
その煤けた四階建てのビルには、
エレベーターは設置されていなかった。
【0065】
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