V 右手に恋、左手に友情

 
 道路整備が行き届き過ぎて、
どの路地も似たものとなってしまい、行けば迷ってしまいそうな住宅地。


 その一面の角地に建つ家の、
公道に面した二階の六畳間が香月の部屋である。


青いブラインドが窓から見える。


 学校区は別だが、住んでいる家自体は近所の沖が、
スイミングの帰りに、泊りがけで遊びに来ていた。


母親同士が友達なので、幼き頃から、互いの家を気楽に行き来している。


 柳腰の香月の母は、物言いも優しい。


だが、生活面での躾となると一転して、
ガンと譲らぬ強気な母へと変貌し、香月を弱らせる。


外出も、夜間からであれば、コンビニといえども許す気はさらさらないらしい。


「明日も学校でしょう? 沖くんも、早くおやすみなさいな」


 子供はさっさと寝るものだ、
との態度は、中学生になっても変化はなし。


しかたなく二人は、ダベリに興じようと布団に潜る。


香月がレンタル・ビデオ屋で借りたカー・アクションの映画に、
いつしか沖が熱心に見入っている。


ラストを知る香月が、退屈まぎれにボソッと言った。


「そういや、まだまだ落ち込んでいるみたいだったな、太田さん」


 かけ布団から、亀のように伸ばして頬杖をついていた沖の首が、
がくんとずっこける。


すかさず香月はリモコンで、エンジン音がうなる映画を小音量へ下げた。


「あぁーっ! 」


 じれったそうに沖が頭をかきむしる。


「ふっふっふっ。君のウィークポイントは、やはりソコかね? 」


「うっせぇな」


 ふてる沖へ、「行って励ましてやんなよ」


 と、香月は冷やかした。


 学校での藍子の様子を聞きたがる沖には、
登校拒否の理由を「クラスでハブにされちまったから」と話しておいた。


合意でなかった辛いレイプの体験を、
たとえ親友とは言え、自分がバラすのは筋違いだと香月なりに判断したからだ。


 沖は顔を枕に伏せながら、殊更に、
ぶっきらぼうな口調で言った。




【0017】

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